ファインダーの向こう

Chapter2

 寿出版の三階にある資料室は、普段誰も利用しない。沙樹もこの会社に入って始めて足を踏み入れる場所だった。ちょうど北側に位置するため中は薄暗く、あまり長居したくはない雰囲気だった。


(結局、なんで逢坂さんが“渡瀬会”を追ってるのか聞きそびれちゃったな……)


 逢坂のことを考えれば考えるほど、胸が締め付けられるような切ない気持ちになる。もっと傍にいて何かしてあげられることはないだろうか、と無意識に考えてしまう。けれど、逢坂は自分が会いたい時に現れない神出鬼没な存在で、沙樹は余計に気持ちを掻き立てられた。


(恋愛の好き……とは違うよね、きっと)


 たとえ気持ちの込められていない口づけだったとしても、沙樹の心を揺るがすには十分だった。それに対して沙樹はただ単に錯覚しているだけなのだと自分に言い聞かせてきた。


(あぁ~! 考えるのやめ! 今は“渡瀬会”について調べてみなきゃ!)


 沙樹は大きくぶんぶんと首を振って気を取り直すと、ゴシップ記事がまとめられている棚を漁りだした。


(え~っと、某俳優ホモ疑惑……これじゃない、女優Kの初公開ヌードの裏側……うーん)


 ダンボールに無造作に押し込まれてる原稿を取り出して、沙樹はひとつひとつ見ていくが、どれもパッとしないゴシップネタばかりだ。


(このダンボールじゃなかったのかな……)


 沙樹が一番奥の記事を取り上げたその時だった。


 ―――“渡瀬会”の隠し子は現職刑事!?


(え……?)


 吸い寄せられるようにその記事を手に取り、目で一字一句見逃さないように追う。
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