ファインダーの向こう
 沙樹の心の中を見透かすようなルミの視線に、沙樹は目を逸らしそうになって留まった。ここで目を逸らしては逆に心証を悪くしてしまう。


「……そうだね、上から頼まれたら芸能もやるよ」


 沙樹は自分の仕事に自信を持っていた。ルミに仕事のことを聞かれたら、なんとかごまかしてしまおうとも考えたが、沙樹はそういう嘘が苦手だった。


「じゃあ、今、沙樹の目の前にいる私は格好のネタ人物ってわけだね」


「そ、そんな……そんなふうに言わないでよ」


「私と、里浦隆治の本当の関係……知りたい?」


 まるでエサを目の前でぶらつかされているような気分だった。沙樹は思いがけず私欲とプライドの狭間で葛藤した。


(ここで私が知りたいって言ったら、ルミは私のこと幻滅するかな……)


 完全に私情が混じっている自分に、沙樹はふと編集長の波多野の言葉を思い出した。



 ―――この仕事は私情を挟んじゃ商売上がったりだから、ジャーナリスト魂を燃やして頑張って!
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