ファインダーの向こう
 静かな部屋に突然、携帯の着信音がけたたましく鳴り響いた。こんな時間に気兼ねなく電話を掛けてくる人物を想像して、その男はうんざりした顔をした。


「はい」


『あ、逢坂か? なんだ、寝てたのか? まだ夜の二時だぞ?』


「波多野さん、なんの用ですかこんな時間に……俺、基本的に夜行性じゃないんですけど?」


『寝起きが悪いなんて、かわいいとこあるじゃないか。まぁいいや、あのさ、ちょっと頼みがあってね。里浦と神山のホットなネタ掴んだからさぁ、あいつらを張って欲しいんだよね。先日、話したろ?』


「あぁ、それで?」


『うちの編集部にいる倉野沙樹って子と同行して欲しいんだ。なかなかスマートで可愛い子だよー』


「は? 俺は単独行動だっていつも言ってますよね? しかも女って―――」


『それがさ、神山の幼馴染なんだよ、神山のネタ撮りの件、乗ってくれるって言ってたんだけど、女の子をひとりで行かせるわけにはいかないからねぇ』


「あんたの言いたいことって、その女が幼馴染の情になびかないように俺がその女を見張れってことだろ?」


『あはは、話が早くて助かっちゃうな~確実にスクープが撮れる情報ゲットしたから、こっちとしても下手打って逃したくないんだよね~』


「……俺は芸能ネタとかはどうでもいいけど」


『逢坂も里浦隆治を狙ってるなら、一席二鳥じゃないか、どうせこの情報の場所に現れるんだし、そういや歌舞伎町に里浦が現れたって、この間電話で言ってたやつどうなった?』


 逢坂と呼ばれた男が髪の毛をかきあげて、煙草に火を点けながらあの時、自分と同じように里浦を追っていた女の影を思い出した。


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