ファインダーの向こう
 十一月の新宿は所々で一足先にクリスマスのオーナメントが飾り付けられていた。夜になると一際煌めいて、見ているだけで楽しい気分になってくる。


「沙樹ー! ごめん、待った?」


 約束の時間を十分ほど過ぎたところでルミが人ごみの中から現れ、向こうのロータリーでルミのマネージャーの車が去っていくのが見えた。相変わらず、夜でも大きめのサングラスにニットの帽子をかぶっている。いつでもどこでも目立って綺麗なルミに、沙樹は少し恥ずかしかさを覚えた。


「今夜も個室のレストラン予約してあるんだ。早く行こう」


「うん」


(よかった、なんだかんだ言って元気そう……)


 沙樹はルミの明るい声にホッとしたものを感じ、レストランへ向かった。



 ルミは芸能界では顔の広い方で様々な芸能人と交流があるのか、沙樹のまったく知らない穴場なレストランやカフェを熟知していた。


「今夜は前回と違ってカジュアルな感じのレストランでしょ? お酒もあるし、たくさん飲んで食べて」


「え? ルミ、この前も出してもらったし、今回は―――」


「いいのいいの、ここ私の知り合いの店だから遠慮しないでよ」


「う、うん……」


 完全にドアで仕切られた個室がなんとなく沙樹にとって落ち着かなかった。ルミは運ばれてきたワインに早速手をつけ、乾杯をするとものすごい勢いで飲み干した。


「喉渇いちゃって、あはは、おっと!」


 カシャンと音を立てて、ルミの手に引っかかったカトラリーが床に落ちる。


「ごめーん、落としちゃった! 新しいの持ってきてー、あはは」


「ルミ……?」


(気のせいかな……なんだろう、この感じ)
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