殺し続ける
しかし、俺は薄々感づいていたのかもしれない。この少女が虐待を受けていると。ただ、考えていたよりも悲惨なもののようだ。
「お前…腕まくりして見ろよ」
俺は確信したくて言った。少女の顔が強張る。
「お父さんにダメって言われてるの」
少女は、しっかりと袖を押さえ込んだ。俺に捲られると思ったようだ。
だが、俺は少女には触れなかった。
触れば壊れそうだった。
痩せているの次元を超えて細い…
薄っぺらだと思った。

「サヤね、昨日の夜に、怒られちゃったんだぁ。サヤがね、トイレに行ったせいなの。サヤが悪かったの。夜は、お父さんの眠りの妨げになるからって…言われてて…なのにお腹が痛くって…サヤはトイレに行っちゃったの」
少女は泣き出した。
「ゴメンナサイ…もうしないから…許して…」
少女は何かに取り付かれたかのように、空を見上げて言い出した。空に懺悔をしているように。
「おい…おいっ!」
俺は少女を異様な物を見るかのように見てしまっていた。あわてて少女に声をかける。
「どうしたの?」
少女は何事も無かったかのように言った。
体が反射的に謝らせるのだろうか。自分を見下す親の目線の位置を覚えていて、少女は空を見たのだろうか。
その間、少女の目には何も映っていないに違いない。朝といえども晴れた空は眩しいのだから…。
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