君色キャンバス
舛花色



階段を上り四階に行くと、誰も通らない廊下を歩いて行く。



行き先は、紗波が居るであろう、美術室だ。



長い廊下の窓の外には、チラホラと紅や橙色の葉が見えている。



「…秋か」



祐輝は美術室の前についた。



中は相変わらず薄暗く、曇りガラスの奥には哀しみのようなものが漂っている。



美術室の前には、さっきまで人が居たような気配がしていた。



コンコン、とノックをすると、聞こえるのは恐怖に染まった声。



「…誰」



震える声を聞いて、許せない気持ちになりながら、返事をする。



「…俺だよ。流岡」



十秒ほど経ってから、また、紗波の声がした。



「…っ、来ないで!」



それは、全てを恐れたような声だった。



< 173 / 274 >

この作品をシェア

pagetop