君色キャンバス
教室に入ると、十五人ほどが居て、角に寄っては、それぞれ仲の良い友達と駄弁りあっていた。
__小百合に連れられて、紗波が来るまでは。
ピタリとお喋りが止まる。
雪、春奈、真美も居たが、顔を強張らせてそそくさと後ろの扉から出て行った。
紗波は何でもない様に、細い傷のついた机に生徒鞄を置いて、準備をし始める。
一通り準備が終わると、ノートを取り出して何かを描き始めた。
あの三人は廊下で、何かをヒソヒソと話しながら、時々 紗波の方を恐れた眼差しで見つめた。
「…マジで人形だよね…」
「気持ち悪い…関わらない方が良い…」
「なんなんだろ、あれ…」
そんな単語が、話の節々に聞こえた。
紗波は微笑むまでも、悲しむまでもなく、ひたすらに絵を描く。
ギーンゴーンガーンゴーン…
鐘が鳴り、校舎内の音や声を盛大に打ち消した。
一限目の授業担任__現代史の教師が二年三組の教室に、入ってきた。
紗波は授業をロクに聞かず、自分自身を外から乖離して、鉛筆を軽やかに踊らせている。
今日の空は雲一つない、快晴だ。
五月十九日の太陽は、地上を明るく照らしては、笑っている。
紗波とは違って。