Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】
 



 ばきばきばきっ!



 炎がアパートを噛み砕く。

 少女のいるベランダに飛んできた頃には、ますます煙がひどくなっていた。

「おい。
 あんた。生きているか?」

 すすで真っ黒になっている少女に、俺は声をかけてみる。

 震えて、ベランダの鉄枠に張り付いていた少女が、俺の声を聞いてきょときょと辺りを見回した。

 『不可視』が邪魔で目の前にいる、俺に気がつかないのだ。

 今まで黙っていた少女が叫んだ。

「誰!? 煙がひどくて……見えないの!
 熱い! 怖いよ 怖いよぉ!!」

「俺は、あんたの目の前にいる。
 助けてやるから……!」

 俺が、喋りながら、パニックを起こしている少女の手をとったとたん。

 彼女の目がまん丸になった。

 少女に触れたことにより、いきなり俺が『見えた』のだ。

 翼の生えた、ヒトとは違う、この俺の姿が。

 あまりに、異質な姿ゆえに。

 まさか、この俺が同じアパートの住人だった、なんてことにも気がつかないようだった。

「き……!」

 驚いて。

 叫び出しそうになった少女の口を、俺は慌てて塞いだ。

「俺はあんたを助けに来た。
 獲って喰う、為じゃない。
 判るか……?」

 少女の目を覗き込むように、言うと。

 彼女の意識が、一瞬、ふぅっと遠のく手ごたえがした。

 魅了が、かかったようだった。

「無駄に叫ぶと、煙を吸い込む。
 手を離すが……もう、叫ぶなよ……?」

 うんうん、とうなづく少女を信じて、俺は、そうっと手を離した。

 とたん。

 魅了に犯された、少女がとろん、とした目で、俺を見つめた。
 

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