スノードームと恋の魔法
僕が住むこの地方は冬になるとかなりの量の雪が降る。
夕方までコンコンと降り続いていた雪は、僕のふくろはぎの辺りまで積もっていた。
スノーブーツを履いているけれど、さらさらした粉雪は僕の足を捉えて、少し歩いただけなのに、息切れし、汗が背中を伝った。
お爺さんは年齢の割にはがっちりとした体格をしていて、こんな雪の上でも、ざくざくと自ら道を作りながら、前へと進んでいった。
電灯のない森の中を進む。
それでも明るく感じるのは、湖の上にぽっかりと出た月が、一面に積もった雪に反射し、辺りを輝かせていたからだ。
キラキラと月灯りを浴びた細かい氷の粒が光っている。
森の中はしんとしていて、僕とお爺さんの息遣いだけが聞こえる。
はあ、はあ
僕の吐く息は白く、湯気のように空に上って、消えていった。
冷たい夜の空気を吸い込んで、僕は前を行くお爺さんの背中を追いかけた。
「大丈夫か?」
一度だけ、お爺さんが僕を振り返った。
うんと大きく頷くと、お爺さんはそうか、もう少しだからなと続けて、また前を向き、ざくざくと雪をかき分けた。