恋唄ーコイウター

act.1

――退屈だ。
この世界はどうしてこうも、退屈なのだろうか。


彼女――榊原亜紀は、屋上のアスファルトに寝そべってフェンスの向こう、青が広がる空を見上げていた。

指定のブレザーは近くに置いて、ワイシャツは第一ボタンを外し、ネクタイも緩めて。
アスファルトに無造作に広がるのは、茶色味がかったセミロングの髪とチェックのスカート。


青に浮かぶ白。
たゆたって、どこへ流れてゆくのだろうか。

亜紀の近くには読みかけの文庫本が二、三冊投げ出されていた。
それすらも今の亜紀には魅力が感じられないのだ。

何回も何回も読み返した本。
退屈を持て余した、無気力な少女。
そして、青。

桜の花びらが一枚、舞い上がってきた。


ガチャリと開かれる、屋上と校舎の中を繋ぐ重たい扉。

誰かがこの場所に侵入してきたのが判った今も、亜紀はそこを動かず瞳を閉じた。
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