妖勾伝

<5>

















飛び込む、
古屋敷ーーー





足を入れたその瞬間、その躰にまとわりつく妖触に、煮えくり返ったように胸が疼く。




視覚。

聴覚。

嗅覚……


レンは、自身の五感をすべて遮られる厭な感覚に眉を顰め、

その濛々と白煙舞立つ間口で、一歩踏みとどまってしまった。




視界を遮る白煙。

片手で避けながら大きな瞳を細め、その奥に蠢くモノを見据える。




先程目にした、鼈甲色の磨き上がる長い廊下はグラリと姿を歪め、まるで生を成した様に脈動を打ち始める。





飛び込んだレンを招き入れるその漆黒の口は、目の前でパックリと開かれていた。







ーーー飲み込まれる…



蠢く闇の大きさに、そんなちっぽけな自身の身を委ね、レンは息をのんだ。








「ーーーチッ…

何時も、
こうだ…」




闇に圧され、レンは毒つく。


周りを必然的に固められていく闇に、レンは苛立ちを抑えられなかった。




神月から寄りどこられた力にしても、幼い頃から自身に巣くう存在にしても…

枷をかけていく様に、レンの細腕にジットリとその触手を絡ませていくのだった。



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