夏休み
進行と過去
お葬式が有る日は、どうして雨が降るんだろう。
五年生になったばかりの雪美は、窓の外で勢いを増す雨を眺めながらふっと思った。
「雪美、晴美行くよ」
目を赤く腫らした父が部屋に入ってきた。
「はい、晴美行くよ」
今年四歳になる晴美は、周りの状況なんか解らず、お人形で遊んでいた。
「ねぇ、どこ行くの?お母さんは?」
晴美のその質問に父も雪美も黙るしか出来なかった。
母は元々体が弱かった訳ではなく、健康体そのものだった。しかし、知らない間に、母の体は病魔に侵されていたのだ。歳は若い方だったので、進行が早く、本当にあっという間だったのだ。
雨の中、傘を差して参列し雪美は隣に立っていた晴美の手を強く握った。
「いたいよ、おねぇちゃん」
「あぁ、ごめん」
遺影を持って歩く父は、体裁など気にせず涙を流していた。雪美はその光景を無表情で見ていた。
その後はどたばたと、忙しかった。
自営業だった雪美の家は、何時までも閉めていられないので、雪美が父の背中を押して、仕事を再開させた。自分は悲しんでいる暇はないと言い聞かせ、家事も一斉に請け負い、晴美の面倒まで見て、雪美は頑張って母親代わりをこなした。
「雪美ちゃん遊んでいこよ」
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