This is us -2



「蓮ちゃん、俺がこんなこと言うのもどうかと思うんだけどさ…」



パイプ椅子に腰を下ろして、佐々木は静かに話し出した。


「小田切さんのこと、見てもなんとも思わない?何も感じない?」


「どういうことだよ」


佐々木は膝の上で拳を強く握る。


「…なんで、なんで…なんで!!小田切さんなんだよ?!」


佐々木の叫び声が、部屋中に響いた。

個室で良かったと、思うけれど…


「俺の事は忘れたっていい!!けどな、小田切さんの事は!小田切さんの事だけは忘れちゃいけないんじゃないのか?!一番大切な人をあんなに傷つけて、そんなの…そんなのあんまりだよ!!」



佐々木は泣いていた。


何故か、俺の瞳からも涙が溢れた。



意味が分からない。

佐々木がどうしてこんなに怒っているのか。


分からないけど、心のどこかがえぐられたように痛い。


じんじんと、痛むんだ。


俺は、何か大切なものを忘れてしまったのか…?



涙は頬を伝い、手の甲にぽたぽたと落ちていく。



なんで、泣いてるんだよ、俺。




.


< 22 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop