恋の片道切符

すると彼も会釈を返してくれた。

(良かった。無視されなくて…)

そう安堵の溜息を吐いた時だった。

彼はスタスタと私の方に近づいて来た。

何だろう、と私はワタワタと焦りだす。

緊張とドキドキで心臓が破裂しそうだ。

そして彼は私の前にピタリと止まり、ニコリと爽やかに微笑んだ。

「こんにちは」

そう挨拶したのは篠崎さんだ。

「こ、こんにちは」

「今日は暑いですね」

「はい」

そんな会話が交わされる。

「今日はお友達はいないんですか?」

「はい。用事があるという事で先に帰りました」

「そうですか。仲、良いんですね」

「いえ、そんな…」

何故だろう。

私、篠崎さんと話せてる。


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