恋の扉を開けて
「君は雅樹のどこに惹かれた?」

「本当は熱い想いでいっぱいなのに、いつも冷静沈着な言動でいて、本来の自分を見せずに夢を追いかけている姿に惹かれました。」

「細かいな。」

「千葉さんは専務のどこに惹かれますか?」

「一見してアバウトな印象とは対照的に細部を気遣う神経の持ち主であることに吸い寄せられてしまった。彼の元を一度は離れたが必ず戻ると僕自身は決めていたんだ。」

「千葉さんも繊細な方ですね。」

「どの部分がそう見える?」

「雰囲気です。」

「雰囲気ね。」

「HPの履歴を全て拝見しました。もの哀しい独特のカラーに染まっていて、その場にいるような錯覚に浸れました。こんな風に表現できる千葉さんに興味が沸いてきたんです。いったいどんな人なのかと。」

「うん。」

「フィルムに納めたいという激しい情熱とまったく正反対のデリケートで静かな表現を好む性質の二つを感じました。」

「君は一つのことを難しく考えすぎるよ。」

「そうでしょうか?」

「今日の撮影では何も考えずに僕の言葉に従ってほしいんだ。できる?」

「努力します。」

「僕が君の中のルリルを最大限に引き出してみせるよ。」

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