恋の扉を開けて
σ.恋の行方
画面の向こうに専務がいた。

「出掛けていたのか?」

「はい。もうすぐクリスマスですのでバーゲンに行ってました。」

私は適当にウソをついた。

専務はいつもと違う私に気付いた。

「髪が濡れてる。珍しいな。」

「すみません。つい時間を忘れてあちこち見ていたので。」

私はすらすらと口からでまかせを言えた。

「スケジュールは年内は多少修正があるがほぼ予定通りだ。」

「承知しました。」

「それから2号店は来春オープンしようと思う。」

「来春ですか?」

かなり先だと私は思った。

専務が決定したことに私は従うしかなかった。

「何かあるのか?」

「いいえ。何もありません。」

「君もティー・マイスターに専念できるだろ?」

「ありがとうございます。」

「オープンは数ヶ月先になるが、そうすることで俺にもメリットがある。」

それは一体どんなメリットなのか私は知りたかった。

「ルリル。」

「はい。」

私は専務の目をしっかりと見た。

「髪を冷やすな。以上だ。」

「お疲れさまです。」

専務は回線を切った。

画面がいつものブルーの壁紙に戻り、私は肩の力を抜いた。

自分が緊張していたことに気付かなかった。

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