続・新撰組と妖狐ちゃん!


火を付けた瞬間、
パチパチッと音を立てて、
線香花火が弾け出す。


打ち上げ花火は見た事はあるけれど、
線香花火は近くで見た事はなかった。


その線香花火の弾ける綺麗な様子と、
土方の不可解な行動にポカンとしていると、


土方は線香花火をあたしの顔の高さまで上げて、


「どうだ、綺麗だろ。」


あたしに花火を見せた。
何を考えているのか読めない土方に
頭にハテナを浮かべながら言った。


「?…あぁ、綺麗だな。」


…綺麗。
…綺麗なんだけども。


あたしは顔を引きつらせた。


「…ちょっっっと、近くないですか←」


火花が散ってきそうなくらいに、
土方は線香花火を近づけてくる←


火は熱いだとか、
火傷するだとか以前に、
まだ火が苦手なあたしは
ジリジリと後ろに下がった。


すると、
土方はニヤリと笑みを浮かべて、


「え、ちょ!?」


あたしの手を取り、
まだ火のついている線香花火を持たせた←


急に持たされた火の気に、
あたしはわたわたと焦っていると、


土方が黒い笑みを浮かべて一言。


「ほら、綺麗だろ?(黒笑)」


…。


「!?テメェっ…!!!!」


それが目的かぁあああ!!!
あたしの火嫌いを利用して
嫌がらせしようってかぁあああ!!


あたしは線香花火を離そうとしたが、
土方に線香花火を持っている手ごと握られているので、全く離せない←


土方に攻撃をしようとも、
火が危ないから無闇に動けない←


どんどん短くなっていく線香花火に比例して、どんどん冷や汗が出てくる←


あたしが物凄く動揺しているのを見て、
土方は、


「くくくっ…(笑)
テメェ、手が震えてるぞ←」


腹を抱えて笑っていた←


「これはっ!
怒りに震えてんだよこのヤロー!!!」


あたしは顔を引きつらせた←


反対の手で土方の手を剥ぎ取ろうとするが、地味に握力が強い←


「ふぬぅうううう〜っ!!!」


あたしが土方の手をどかそうと
力を込めたら、


「…あり?」


あっさりと土方は手を離した←
そして、顎に手を当て、
あたしを上から下までまじまじと見ると、


「…やっぱ、花火っつーのは、
男より女が似合うよな…」


そう呟いた。


「…は?」


突然の意味が分からない発言に
あたしが顔をしかめると、
土方がはぁ…と溜息をついた。
そして、


「…テメェはそんな顔しなかったら、
花火に負けず劣らず…つーかそれ以上なのによ。…オラ、大人しく花火やっとけ。」


「…え。」


そう言って、手をひらひらさせながら
幹部がいる所へ戻って行く土方に、


花火に負けず劣らず何なんだよ、
そう聞きたかったけれど、


ポトッ


「…あ。」


暗がりを灯していた線香花火が
遂に落ちて、


土方の後ろ姿は見えなくなった。





…。


「日向〜??
早くしないと花火なくなっちゃうよ?」


向こうから聞こえてくる
呑気な沖田の声に、


「…今行く。」


あたしは皆の元へと駆け出した。







握られていた手が熱いのは、
顔や身体が火照るのは、


きっと、
線香花火と夏のせい。




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