フラグ


海岸沿いの国道27号線を敦賀方面に走り出した。



最初の信号待ちの時に、3台のバイクが横に並んだ。


友子「気持ち良いぃー!キャハハ」


いつか「バイクっていいね」


田中「私は、ちょっと怖い…」


俺「田中、俺の肩掴んでる手を腰に回してみ、ちょっとはマシかも」


田中「うん…」


花「ほんで健太、そのタンクの上に巻き付けてるデカイ袋なんや?」



信号が青になって俺達は走り出した。



走り出す瞬間に健太が「ボートやボート」と言っていた。



しばらく走っていると、友子ちゃんが「GO!GO!GO!GOー!!」と握りこぶしを振り上げ叫びながら健太のバイクが追い抜いて行った。


俺「あの二人ノリノリやな」


田中「えぇ!?何て!?」



走っているバイクの上では風の音が邪魔してなかなか聞き取れない。


俺「あいつら楽しそうやな!!」



返事は聞こえ無かったが田中に聞こえたようだった。



俺の腰に田中が腕を回してから、俺の背中に田中が密着している。



昨日から田中との距離がかなり近くなった。



もう会えないと思っていた、あの田中と俺は一緒のバイクに乗っている。



ほんの2日前までは、夢にも思わなかった。



この田中との距離感、感触、存在感、今の俺にはそれだけで幸せだった。


次の信号待ちで俺は「どう?まだ怖い?」と田中に聞いた。


田中「だいぶマシになったし馴れてきたから大丈夫」


俺「そら良かった」



健太と友子ちゃんは、似た者同士で依然として和気あいあいとしている。



花といつかちゃんも案外楽しそいに話していた。



それからしばらく走って色浜に着いた。


田中「綺麗な海やね!」


俺「雑誌の写真のまんま綺麗やな」


友子「着いた着いたぁー!」


花「ええ海やな」


健太「テンション上がって来たー!」


いつか「浅瀬は続いてるけど、あの島みたいになってる砂浜まで歩いて行けるの?」


俺「写真では行けるっぽい感じやったけど」


田中「途中、海深そうやんね?」


花「あぁ、ちょっと無理そうやな」


友子「あそこ行けへんの!?」


健太「行けるって、俺のボートがあるやん!」


俺「お前、そのボートで行くつもりか?」


健太「あたり前田のクラッカーや!」


花「おい!」


俺「ん?」


花「向こうにボート乗り場あるぞ」


田中「あっ!ほんまや」


健太「ほな、俺聞いてきたるわ」


俺「頼むわ健太」


田中「普通は船で渡るんかな?」


俺「かもしれへんな」


花「引き潮の時やったら分からへんけどな」



健太が聞いて帰って来た。


健太「あれやっぱり渡し船やな」


俺「よっしゃ、ほなこの辺にバイク停めて色浜上陸しよう」


友子「行くぞ!野郎共!キャハハ」


健太「もたもたすんなぁー野郎共!」


友子「キャハハハハハ」


花「何なんやねん?お前らは」



バイクを 停めて、みんなで船乗り場に行った。


俺「よっしゃ行こう」


いつか「ちょっと待って」


田中「どうしたん?いつか」


いつか「お昼ごはんどうするの?」


俺「ほんまやな!考えて無かったわ」


花「もうちょっとで昼やもんな」


健太「何してんねん?お前ら」



船乗り場まで行っていた健太が戻って来た。


花「もうすぐ昼なんやけど、色浜上陸したらメシ無いなって話ししとったんや」


健太「うお!そらそうやな!」


友子「ほんなら先にその辺で食べてから行こう」


俺「それしかないな」


花「ほなとりあえず、またバイクに乗って行かなあかんな」


健太「ほんなら、とっとと行こうや」



俺達は、国道まで戻ってファミレスで昼食を取り、途中コンビニに寄って飲み物やお菓子を買って、また船乗り場に戻って来た。


健太「やっと色浜に行ける」



俺達は、往復券を買って渡し船に乗った。



みんな船に乗って「凄い」とか「海綺麗」とか「気持ち良い」とかではしゃいでいたが、すぐに色浜に着いた。


健太「ヒャッホー!」



健太は、船から下りるやいなや走り出した。


友子「キャッホー!」



健太に付いていくように友子ちゃんも奇声を上げて走り出した。


花「似てるなぁ、あの二人」


田中「そうやんね、ウフフ」


俺「女子で健太に似てるて友子ちゃんくらいちゃう?あははっ」


いつか「フフフ」


花「無邪気なところは瓜二つやな、ハハハ」


俺「そやけど、えらい向こうの方まで浅瀬やな」


田中「ほんまやね」


いつか「ここやったら泳げなくても平気やね美幸」


田中「ここやったら海を楽しめそう」


俺「せっかく来たんやし楽しまなな」


いつか「ボール持って来たんやけど」


花「おっ!ええやん!4人でビーチバレーでもするか?」


田中「でもネットないで?」


俺「ネット無しで、ラリー合戦とかでええやん」


いつか「いいね、それ」


花「よし!決まり!ほな荷物置いてビーチバレーしよう」



俺達は、田中達が持って来たビニールシートの上に荷物を置いて、早速ビーチバレーをすることになった。



俺、田中チーム対花、いつかちゃんチームに分かれてやることになった。



ボールを膨らまして浅瀬でビーチバレーをする。



意外に面白くて4人とも盛り上がった。


花「よっしゃ!スパイク!」


「バンッ!」


俺「うわ!」


田中「ウフフフフフ」


いつか「ちょっと休憩しよ」


花「そやな、さすがに疲れて来たわ」



俺達は、砂浜のビニールシートに行って休憩をすることにした。


俺「そう言えば、健太と友子ちゃんは?」


田中「どこ行ったんやろ?」


花「あのテンションの二人から目離したらあかんかったな」


いつか「あのボートやない?」



いつかちゃんが指を指した方に目を向ける。



結構遠くに健太のボートらしいのが見えるが、遠くて乗っている人物まで見えない。


花「色浜から更に沖に出る奴は健太以外におらんと思わへんか?」


俺「そう言われてみればそうかも」


花「韓国にでも行く気か?あいつ」


いつか「ボートで韓国まで行けるん?」


田中「帰って来れるのかな?」


俺「あんまり沖に出過ぎたら帰って来れへんようになるで」


田中「えぇ!?そんなん?」


花「シャレやないけど、あんまり沖に出過ぎたら遭難するな」


いつか「どうしよう……」


俺「とりあえず、今は見てるしかないか」


田中「何で沖に出過ぎたら帰って来れなくなるん?」


花「潮の流れが変わるから」


田中「どう変わるん?」


花「沖に出るまでは砂浜に向かって潮が流れてるんやけど、沖に出過ぎたら今度は沖に沖に潮が流れるんや」


田中「えぇ!」


いつか「どうしよう…」


俺「健太がヤバい事にいつ気付くかが問題やな」


花「潮の流れがどっちに流れても、健太がそれ以上にボート漕いだらええんやけどな」



その後、遠く離れた俺達にも分かるくらい必死に健太はボートで漕いで帰って来た。


友子「キャハハハハハ」


俺「笑ってるぞ、あははっ」


いつか「友子は、いつも笑ってるから」


健太「ヤバかったでぇ!」


花「アホやろ!お前」


田中「ヒヤヒヤしたやん!友子」


友子「朝鮮半島見えたで、キャハハハハハ」


俺「見えるか!」


友子「キャハハハハハ」



その後は、俺と田中チーム、健太と友子ちゃんチーム、花といつかちゃんチームに分かれてビーチバレーのリーグ戦をやることになった。



リーグ戦は、意外な盛り上がりを見せて花といつかちゃんチームが優勝して、俺と田中チームが2位だった。



ビーチバレーのリーグ戦が終わって、みんなで休憩している時に俺が「田中、夜祭りがあるらしいんやけど一緒に行かへん?」と誘った。


田中「祭りどこでやってるん?」


俺「俺らが泊まってる近くの港でやってるらしいで」


田中「ええよ、行こう」



近くで聞いていた友子ちゃんが「祭り!?行く行く!」と言って喜んでいた。


俺「んじゃ、決定やな」


友子「ほな、色浜撤収!キャハハハハハ!祭りに行くぞぉー!」


健太「オー!!」



そう言うと、健太と友子ちゃんは本当に荷物をまとめ出した。


田中「えっ!?ほんまに友子?」


友子「ほんまにほんまにぃ~!キャハハ」


いつか「もぅ、落ち着きないなぁ友子」


花「行動力ありすぎやな、ハハハ」


俺「しゃーないな田中」


田中「うん、ほんなら帰る用意しよう」



バタバタと帰る用意を済ませた健太と友子ちゃんは、「祭りに行くぞぉ!」と叫んでいた。


俺達は、健太達から少し遅れて帰る用意が終わって渡し船の乗り場に向かった。


俺「何でこんなテンション高いんや……」


いつか「友子は、いつもテンションだけは高いねん」


田中「そこが良いところやけどね」


花「悪いことやないけど、付いて行くのに体力いるな」


いつか「それは言える、フフフ」



当の友子ちゃんは、健太と船の先頭で「祭り!祭り!」と騒いでいた。



船を降りた俺達は、来た時と同じようにバイクで田中達が泊まっているホテルに向かった。



ホテルに着いて、田中達を降ろして俺は「ほな30分後くらいにしとく?」と言った。


田中「そうやね、それくらいで用意する」


友子「45秒で支度しな!キャハハ」


花「そりゃ、パズーしか無理やろ!」


友子「キャハハハハハ」


健太「とにかく、急いで祭り行くぞ」


俺「分かった分かった、ほな田中また後でな」


田中「うん、30分後」



俺達も民宿に戻って祭りに行く用意をした。


花「ちょっと砂落としに、風呂行って来るわ」


俺「あっ!俺も俺も!」



ざっと、流すだけ流して戻る時に健太とすれ違った。


俺「今からか?健太」


健太「すぐすむから!」



と言って風呂に入って行った。


花「あんな祭り祭り言うてたのに時間大丈夫か?ハハハ」


俺「健太やったら大丈夫やろ」


花「待ち合わせ7分前やで」


俺「うわ!ほんまや!急ぐぞ花!」


花「おぅ!」



俺と花は5分前にバイクに股がり、田中達を迎えに行く準備が整っていた。



健太が、ズボンに片足を突っ込んだまま民宿から飛び出して来た。


花「お前、何しとんねん?ハハハ」



俺は、少し虐めてやろうと思いバイクのエンジンをかけて「健太、先行くぞ」と言ってバイクで走り出した。



花も、同じくバイクを発車させた。



サイドミラーで健太を見ると、ズボンのベルトを片手でしながら付いて来ていた。



約束通り30分後に田中達のホテル前に着いたら、田中達もちょうどホテルから出て来た。 



友子「祭り祭り!キャハハ」


田中「待った?」


俺「ちょうど今着いたところやで」


健太「はよ行くでぇ!」


花「今の今までズボン履いてた奴が言うか?ハハハ」


俺「あははっ」


健太「黙れ!」


田中「ウフフフフフ」



各自バイクに乗って、近くの港に向かった。



バイクだと5分くらいの距離だ。



適当なところにバイクを停めて、祭りに行くと地元の祭りとは少し違う雰囲気にテンションが上がった。


友子「健ちゃん!綿あめ行こ!」


健太「行こ行こぉ!」



健太と友子ちゃんの二人は、あっという間に居なくなった。


俺「大丈夫か?あの二人」


花「俺あの二人探しながら祭り行って来るわ、いつかちゃんも手伝ってくれへん?」


いつか「うん」


俺「祭りが終わったら適当にバイクで待ち合わせでええか?」


花「そやな、そうしよか」


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