ご懐妊‼ 新装版
痛くても死にそうでも、

私はもうどこにも逃げられない。


ポンちゃんを産み落とすまで。


この悪夢から逃れられない。


私は分娩台の上でいきみ続け、痛みで首をぶんぶん振りまくり、足をガンガン足台に振り下ろした。


陣痛の合間に束の間意識が遠退く。

それは不思議な感覚だった。
私はものすごく短く眠っているのだ。
夢も見ている。

それは、つわりで病院に連れてこられた時、見た夢と似ていた。

ゆらゆらする世界。
海の底。

オレンジ色の光。

あたたかくて心地よくて、その一瞬だけが天国のようだった。


すぐに鬼に身体を八つ裂きにされるような痛みで、現実に引き戻される。
私はいきんで、半分叫んで、また頭をぶんぶん振った。

時間にすれば1時間半くらいだったらしい。
でも、この時間の長さはその100倍くらいの体感を私に与えた。


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