小指も抱けない彼女

耳を塞ぐ間さえなく、断固として変わらない彼女の決断。

寂しいーーそうして、嘆きたい。

君は、俺を愛していないのか、と。

「聖……」

「くー、くー」

「寝たふりはしないでよ」

とは言っても、彼女はこのままふりから熟睡へと移行する。

密着する彼女をきつく抱きたい衝動にかられたが、寝たがっているのを邪魔しては悪い。目を下に向け、彼女の後頭部に指を這わす。

「俺のそばに、死ぬまでいて。ーーは、酷いワガママなのか」

口がない後頭部に向けての独り言。
こんなにも人を愛してしまった俺がおかしいのか。

「死ぬまでで、いいの?」

答えは彼女によって導き出される。
いたずらっ子の笑みを見て、笑ってしまう答えを聞く。

「死んでも、そばにいてくれるか」

「大好きな人のそばにいますよーだ」

えへへ、と俺の体に甘える聖。
嬉しい答えで満足してしまったが、上手い具合にはぐらかされたのを自覚する。

彼女の特技は、俺を喜ばすこと。
単純に、俺が彼女を愛しすぎているだけの話だが。

彼女はきっと、一人でも生きていけるのだろう。

俺は彼女がいなければ、寂しさで死ねると馬鹿なことを考え続けてしまうのに。

思ったーー
ついには願う。

彼女が俺なしでは生きていけないようになればいい。

しかして、具体的な案が出ないからこのまま。もうしかしたら、そんな願いは実現しない方がいいのかもしれないがーー彼女に触れる度、願わずにはいられない。

「俺だけを見続けて」

他は要らないと言えるぐらいに、愛してほしい。


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