恋のためらい~S系同期に誘惑されて~


「あの時、話しかけられて穏やかで楽しい人だなって思ったんだよ。その後も何回か話すこともあって」

何度か休憩所の自販機で会ったり、通勤途中で顔を合わせたり。

確かに社長の言う通り、横の繋がりは出来た。


「そのうち私のこと知りたいって言ってくれたし。そんなシチュエーション久々だったから」


判り易い好意に浮足立った感は否めないけれど。

でも、ゆっくりでも気持ちが傾けば良いと思っていた。


この年になってのめり込む様な恋は怖いから。



「正直に言うと、里沙が永井さんと付き合うなんて思ってなかったから、びっくりしたわよ。私も……笹山もね」

「早紀だって、仕事ばかりするなって言ったじゃない」

「だからってねぇ」

「結局、フラれたし」

「まぁ、永井さんはムカつくけど仕方ないわね、妥当な結果。結局、花より団子でしょ」

「意味判らない。もっと噛み砕いて言って」

「遠くで眺めるだけの花より、身近にある団子食べちゃったってこと」

「っ、えげつない上に使い方間違ってるし。私観賞する程のもんじゃないし」


早紀は、ふふんと鼻で笑った。

「里沙はさぁ、今でこそ出来る女風になってるけど、入社当時なんてフワッフワッしててさ、すぐに寿退職するんじゃないかと思ってたんだよね」

「そんなの初耳」

「でも、変わったじゃない?前の彼と別れてから」
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