恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「……お前ね、人が顔見た瞬間に顔隠すってどうよ」

「い、いやっ。私見られたくないもん。凄いことになってる筈だから」

毛布に戻らないでそのまま、バスルームに行くべきだった。

後悔してもすでに遅し、だ。


「あんなに色々恥ずかしいことしたっつうのに、今更?」

笹山は笑いながら、容赦なく私から毛布を引き離した。

「おはよう、タマ」

「……おはよ」

私が横目で睨み付けても、笹山は私のボサボサな筈の頭を撫で続ける。

それも、とても爽やかな笑顔で。

「ホント、意地悪」

「馬鹿だな、タマ。『あばたもえくぼ』ってことわざがあるだろ」

あばたですか……。

「惚れた女が少し位ヨレてたって、自分がそうしたと思ったら可愛く見えるってもんだろうが」

更に笹山は、私の髪に口付けを落としつつ「取って食われた感丸出しでそそる」だなんて、S気質たっぷりの言葉を吐いた。

笹山の唇が、耳元に、頬に、瞼に、降り注ぐ。

笹山のそれが口元に降りて来た時、再びスマホのに鈍い振動が体へと伝わって来た。

「ちょ、ちょっとタイム」

反射的に手元のスマホを握ろうとした私を、あろうことか笹山は手で制す。

「ったく、空気の読めねぇ」

「わっ!!だって、早紀とかうちの親かもっ」

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