恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
私の何とも言い難い顔を見て、笹山は笑みを浮かべた。

「なんつー顔。あ、毎日会えないのが寂しいのかよ。タマも可愛いとこあるな」

「ち、違うわっ。私……笹山のこと目標に頑張って来たから。また、水をあけられると思ったら、何だか。何だか悔しくなっただけ」

そりゃ、毎日会えないのだって……寂しくないわけないけど。


いつも追い付こうとしても、中々追い付けない、笹山の背中。

また、遠くなっていくのか。


「お前のそういうところ好きだよ。いつも本気で頑張ってるところ。だから俺もそろそろ本腰入れていきてぇんだ」

笹山は煙草の火を消すと、私を体ごとひょいと抱き寄せ、膝の上に座らせた。


「……なぁ、世話焼き成瀬のそいつ、今から使うか」

早紀のプレゼントをおもむろに指で差し、悪戯にニヤリと笑った。

「なっ」

「なぁタマ」

笹山が首筋に顔を埋めながら話すので、息が掛かってこそばゆい。

「……何よ」

「愛してるって言ったっけ」


笹山の甘い囁きに、まだ慣れない私がいるけれど。

「来年のクリスマス、一緒にケーキ食べてくれるなら、考えても良い」

私の中にも愛おしい気持ちが溢れて、笹山の肩にぎゅうっと抱き付いた。


「お前のこと手離せそうにねぇや。……盛った高校生並だわ、俺」


私はどうやら、笹山に侵食されていく運命らしい。



もう、この恋にためらいはいらない。




     --- End ---


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