恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
スマホを切った後そんなことを考えてぼんやりしていると、笹山の視線が突き刺さる。

まるでグサグサと音が聞こえてきそうな位。

「な、何なの。笹山」

「……みーちゃん先輩って」

煙草を口に銜えたまま、火を点けずにじっと私の顔を見据える笹山。

そのくっきりとした瞳を少し細めて、呟いた。

「オトコな訳?」

「……? そうだけど」

私の返事を聞いたら「へぇ」とだけ声を漏らしてようやく煙草を吸い込んだ。


何、この間は。

この、シラッとした空気。

……もしかして? もしかしてですか。

「無いからね、ナイ、ナイ。先輩と1度も1ミリも何にもないよっ?」

「……聞いてねぇし」

笹山は煙草の煙と一緒に言葉を吐き出した。

「ってか、お前鈍いから。お前が1ミクロンもなくても、相手は分んねーだろうが」

何せ俺のことすら気付かなかったくせに、と鋭くツッコミまで入れる始末。


「まあ、いいや。俺も行くから」

「へっ? え? 笹山も?! 何か恥ずかしいんですけど」

「俺じゃ不満な訳?」なんて不機嫌にならないでよ。


「……不満なんて、ある訳ないじゃん」

私がぼそりと言うと、笹山は煙草の火を揉み消してから、私の頭を撫で撫でし始める。


暫く私の頭を撫でた後。

「なぁ……キスして良いか?」

「何で聞くの」

あの時なんて、いきなりキスしたくせに。
< 75 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop