私のファーストキスもらって下さい。





あ、結局そのバレンタイン、どうなったかと言うとね?



バカなのか、大胆なのか、大学の近くで待ち伏せしてたんだ。


えみに聞いたら、今日はお昼から大学だから夕方には帰って来るんじゃない?って。



誠二くんがバレンタインなのにまっすぐ家に帰ることを私は知ってた。



だって、鞄いっぱいのチョコを貰って…


「食わないから、やる。」


そう言って、全部えみにあげちゃうから。


だから、ここで待ってれば誠二くんに会えるはず。


でも、なんと言ってもバレンタインデーは寒い季節で…



「くしゅっ…」



徐々に暗くなっていく寒空を見上げていると、



「あれ?鈴ちゃん?」



見ると、顔の半分くらいまでマフラーをした誠二くんが驚いた顔をして立っていた。



カッコイイ…

つい見とれてしまってた私。


「鈴ちゃん?」


あ、やばいやばい。

いつの間にか私の前に立っていた誠二くんに慌てて口を開いた。



「今日、バレンタインだから…チョコ渡そうと思って。」


「ありがと、鈴ちゃん。ってか、その為にずっと待ってたの?」


私が頷くと、誠二くんは…


「冷た…。風邪引いちゃうだろ~。」



って、私の手を…手を…ぎゅって…して、
ハァーって暖めてくれたんだ。


もうその時の私は一瞬にして暖まってしまったのを覚えてる。


暖かいを通り越して暑いくらいだった。


だって、そんな…好きな人にそんな優しいことされたらドキドキしちゃうに決まってるよね。



誠二くんはそんな優しいことを何気なくしちゃうから、ホントに困っちゃうよ。



それから一緒に歩いて、帰った。

すごいハッピーなバレンタインに見えるけど、
そうでもなかったんだ。



「お、今年は手作り?」


「うん。あ、甘さ控えめだよ。」


「おー、サンキュ。鈴ちゃんのは毎年食えるんだよなー。」



わかってるよ。誠二くん甘いもの苦手だから、
毎年あんまり甘くないお菓子を贈ってたんだよ?


ちょっとは気にしてくれた?



「はぁ、鈴ちゃんもお菓子作りする年頃か。
俺も年取るわけだなぁ。」



そうだよ?
私もちょっとは大人になってるんだよ。
気づいて、誠二くん。








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