ワインお作りします


「まだ疑われてますか?」

彼はニコニコと笑う。

「嘘はついていませんからご安心を。さて。では、貴方の行きたい未来を思い描いて、この瓶を回して下さい。」

そう言うと彼はワインを目の前に置いた。

回したくらいでワインなんて出来るはずがない。
そんな事くらい解っている。
それでもなんとなく、黄色の瓶を手に取り回して見た。

「おお。」

葡萄はさらにくるくると回り、色を変えて、いつのまにか、一般的に売られているような色になった。

店員さんは見るなり満足そうにそれを紙袋に入れて、俺に差し出した。

「必ずお一人で飲んで下さい。」

「あぁ。」

というか、独りきりだから一人でしか飲めないけどな。
紙袋を受け取ると、俺は店を跡にした。

外に出て腕時計を見ると、いつの間にか時間は21時を過ぎていて、いつもの所へは寄れそうになかった。
必ず、毎日寄っていたのに…。
だからと言って、別に愛が減ったわけではない。

本当にこんな夜は久しぶりだ。


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