四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
その日は、抜き打ちで服装検査があるという話だった。

クラスメイトはみんな一斉にスカート丈を気にし始める。


「それ折ってたのばればれだよ!折りジワついてる。」

「うそー、困ったな。気付かれちゃうかなぁ、やっぱり。」

「あっ!校章忘れた!」


教室は一気に騒がしくなる。

私は普段から模範的なスカート丈。
長い髪も一つに結わえているし、化粧もしていない。

だからいつも、他人事みたいに服装検査を受けている。


服装を整えるのに必死な女子が整え終わる前に、ガラッとドアが開いた。


「服装検査をするので廊下に出て番号順に並びなさい。」


その高い声には聴き覚えがあった。

思わず顔をしかめる。

……担当が篠原さんだなんて、誰が予想するだろうか。


小倉はこのクラスでは比較的早い。

だからあっという間に順番が回ってきた。


「小倉詩織さんね。スカート丈はいいわ。ピアスもなし。……あら、ポケットの中には何が入っているの?」


――え?


私がきょとんとした隙に、篠原さんが私の胸ポケットから銀色のものを取り出した。


「それは……。」


篠原さんに笑って目配せすれば、伝わると思った。

それなのに、篠原さんは急に大きな声で夏目を呼んだ。


「夏目先生!この子犯人よ!」


クラスメイトの視線が集まる。

夏目が怪訝な顔で近づいてきた。


「どうした?」

「小倉さん、あなたの家の合鍵を持っていたの。」

「なぜ分かる?」

「ほら、比べれば分かるでしょ。」


得意げな顔で自分のポケットから出した鍵と並べる。


「私この間、鍵を失くしたの。確かに失くしたんだけど、また同じところで見つけて。おかしいなぁ、って思ってたの。その間に合鍵を作ったのよ。恐ろしい子ね。」


夏目は困惑した表情で私を見つめた。


「小倉、これはどこの鍵だ?」

「……。」

「おまえんちのだろ。な?」

「先生の……部屋の。」


夏目は言葉を失った。

その向こうで、篠原さんが笑ったように見えた。




はめられた―――――
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