四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「お父さんは、詩織の悪者になるわけにはいかない。」


早瀬はさらっとした声で告げた。

言っている意味がすぐには分からなかった。

でも、しばらくして、なんとなくだけど早瀬は私の味方なんだと感じた。


「じゃあ、」

「ここにも、俺が持ってる家があるんだ。通学時間は前に住んでいたところとさほど変わらないだろう。」


みるみるうちに、私の目に涙が溢れた。


「お父さん……。」

「泣くほど嫌なら、そう言えばよかったじゃないか。お父さんは詩織のわがままなら何でも聞くって言っただろ。」

「ありがとう。」


やっとのことで言うと、早瀬は笑った。


「もっとずっと大きな家に、綺麗な部屋を準備して待ってたんだぞ。」

「ごめんなさい。」

「でもすぐに、家具を運んでこさせるから。」

「私、何もいらない。ここにいられれば、他に何もいらない。」

「そう遠慮するなよ。」


早瀬は困ったように笑いながら言った。


私は、嬉しい気持ちでいっぱいだった―――
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