四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~

実習助手

なつは見る見るうちに大きくなる。

気付くと、黄色かった毛がだんだん茶色っぽくなってきた。
背も伸びて、前よりはっきり鳴くようにもなった。

早瀬には何も言われない。

その点において、私は安心していた。


「詩織、じゃあお父さん行くけど。」

「うん。」

「くれぐれも気を付けて。」

「大丈夫。」

「またすぐ、戻ってくるから。」

「うん。」


早瀬が車に乗って、東京へ向かってしまった。

でも、なぜだろう。

叔母さんの家にいた時は、家族がそろっていても私は寂しさを感じていた。

しかし今は、一戸建ての家にたった一人でも寂しくなんてない。


「なつ、また二人ぼっちだね。」

「ぴー!」

「二人ぼっちは好きだよ。」


窓の外からこぼれ入る光は、もう夏を過ぎた香りがする。

アブラゼミが鳴かなくなって、最近ではヒグラシが寂しい鳴き声をたてている。

季節はだれにも止めることはできない。



でも、だからこそ季節は、時にやさしい魔女となるのだ――
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