君のそばにいるだけで。

 いきなり名前で言われたのに、なぜだか馴れ馴れしいとは思わなかった。

まるで、昔から出会っていたかのように。

 それよりも、さっきからあたしの鼓動がおかしくなっている。

あの日以来だ。

こんなに男子にドキドキしたのは。

固まっているあたしに、純平が、

「どーした?優愛、大丈夫か?」

と、心配そうに覗き込んでくる。

 バクバクと音を立てて鳴る鼓動に苛立って、あたしは、

「何!もうさっきからうるさい!」

と理解できない苛立ちをいつの間にか純平にぶつけていた。

目を見開いて驚く純平に、ごめんと謝る前に、

「ハハッ、ごめん。心配のしすぎだったな。」

と、笑いながら言った。

 あたしは少し顔を赤らめた。

 心配されてほんの少し期待している自分がいることに驚いた。

でも、あたしは気づいてたんだ。

 今の君の笑顔の後に、一瞬、悲しい顔を見せていたことを。

あたしは見ていないふりをして、

「ごめん。あんな事言うつもりじゃなかったから。」

と言った。

 さっきの悲しそうな顔は一体なんだったんだろう?

訊きたいけれど、訊いたらいけない気がして結局、訊くことはできなかった。

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