野球ってよくない?(短篇集)
短編なう
「野球ぅ…?」
「そ!分かる?ルール」
「え…わから…ないです!」

男子の友達と同じ番組を見たことで盛り上がってしまい
なぜか野球の話に移ってしまった

「じゃあ、真島選手!」
「ま、じま?え、誰ですか?」

女子が首を傾げると男子が腹を抱えて笑い始めた

「マジでわからないんだ!あー!」
「あじま?」

男子はまた爆笑し始めた
笑いすぎて涙を浮かべるほどだった

「ま!じ!ま!バカだなぁ!」
「ううううう!絶対詳しくなってやる!」
「あははははは!ぜってぇ無理!」

この話をしたのは春だった
シーズン前だから、調べるにはちょうどよかった時期だった


「真島選手、覚えられた?鳥頭!」
「鳥頭じゃないもんね!
両うちで、守備位置は外野
背番号は26!」

男子は驚いた顔をすると、女子の頭をいきなり優しく叩いた

「ありがとう!」
「っ!?」

2人しかいない教室で男子は笑った

「これで決定だ」
「なにが!?」

男子の顔が一瞬にして赤くなった

「俺の好きな人」

中学1年生の頃の話だそうだ




太陽が照りつける中球場に金属バットの高い音と共に歓声が上がった


その音を鳴り響かせたボールは女子の手の中に入った



サイレンの音と歓声が混じる中、男子が大声で叫んだ



「俺の彼女になってください!」

その声は女子の耳の中に入ると、女子は頬を赤く染めた

サイレンと歓声が収まると女子は男子の顔を見た



「はい」


一度おさまったはずの声は一瞬にして
もう一度球場を包んだ




「ぼくのゆめは、こうしえんで、きみにこくはくして かれしになることです!」
「わたしのゆめはきみのゆめをおおえんすることです そして、いいおよめさんになることです!」



叶うはずなかった
だけど、2人はそれを叶えたのだ

それを叶えさせてくれたのは、2人の親や親戚などだった


「さようなら」

女子は微笑んだ


「…ごめんな でも、一生好きでいる!お前を忘れない!」

男子は涙を流した
女子は男子の手を握りしめ、最後の力を振り絞って顔を近づけた


僕が15歳の時
君はキスを残すとこの世を去った


マウンドに立つたびに僕は空を見上げてから、ミットにあのボールを最初に投げた





_野球を頑張れる秘訣は何ですか?


彼女を思うことです
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