歌姫桜華
高校一年の桜が咲き終えたそんな時季。
小さな小さな一歩動き出した私。その一歩で、私たちの関係がだんだんと崩れ始めていった―――――――………
家に着き、玄関を開けながら「ただいまぁ」と疲れ気味に言う。
「おかえりなさい、朱綾」
リビングから顔を出し、いつもの明るい声で私に言うのはお母さん。
「ただいま、お母さん」
私の名前は、玄野 朱綾【クロノ アヤ】。
私の家族は、少し“普通”とはずれている。