異世界で家庭菜園やってみた
「これ、コウメさまが!?」

「ええ、そう。土作りから初めて、けっこうな年月を費やして、やっと最近満足のいく物が出来るようになったんのよ」

「……」

悠里はのろのろと畑に近付いて行った。

緑の濃い、ホウレン草。ニョキッと顔を出した、白い大根。

見ただけで口の中に唾が出てくる、美味しそうな野菜たち。

「これを、コウメさまが……」

その時悠里の中に、何かがふつふつと湧き上がって来た。

それは今まで感じたことのない衝動だった。

「鍬(くわ)を……」

「え?」

「鍬を貸してください!!」





この時のことを、後にコウメさまはこう語っている。

必死な形相で「鍬!」と叫ぶうら若き乙女の、未来が少し不安になったと。

けれど、この瞬間が、悠里という少女の確かな前進であったと。



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