緋色の魅薬
手が痛くなるのを感じても、明は絶えずシュレッダーのハンドルを回し続ける。

春樹が帰ってくる前に、この三枚のプリントを処分しておかなくてはならないと思っていた。


シュレッダーにかけたプリントの残骸を、トイレに流す。


最後に、正常に水が流れたのを確認して、明はリビングに戻った。

そして、電話を見て愕然とした。


留守電のランプが消えている。

先ほどかかってきた電話を聞いて、もう一度内容を聞こうと再生したのが原因だった。


春樹はきっと今、電話の男性と会っている。

そしたら男性は言うだろう。


「さっき電話したんだが」と。


明は無意識に左手首を押さえていた。

痣や切り傷が痛々しい左手首。
それは、明の『お仕置き』をする場所だった。

一番傷付けられるのが左手首。


でもこの電話の内容は重要なものだ。
そんな事、小学生の明にも判る。


事の重要性を思うと、明は自然に体が震え、その場に座り込んでいた。

時計の針が進む音が、リビング中に響いていた。
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