キミさえいれば
「しかし、深刻な状況だね……。

二人の交際を認めてもいいけれど、まだ保も凛も高校生だ。

現実的に、赤ちゃんを育てるのは難しいんじゃないかな……?」


父さんの言葉に、ドクンと心臓が跳ね上がる。


震えてしまう私の手を、先輩がぎゅっと握り締めてくれる。


「私もそう思うわ。

保には大学へ行って欲しいし、凛もせめて高校は卒業して欲しい。

今すぐ結婚、出産っていうのは、私も無理だと思うわ……」


そんな……。


赤ちゃんを諦めないといけないなんて……。


私の目にみるみる涙が溜まっていく。


それを見たお父さんが、悲しそうな顔をした。


「凛。

とりあえず、今日は何も考えないでゆっくり休むんだ。

いいね?」


優しく微笑むお父さんに、私はこくんと頷いた。


「保、今夜は帰ろう。

また明日会いに来よう」


「でも……」


心配そうに私を見つめる先輩。


「保、大丈夫よ。

母さんが今夜はここに泊まるし、何かあればすぐ連絡するから。

保も疲れたでしょう?

ゆっくり休みなさい」


先輩は目を閉じて大きく息を吐くと、ゆっくりと目を開けた。


「凛。また明日来るから。ゆっくり休んで」


そう言って私の髪を撫でる先輩に、私は「はい」と返事をした。


こうしてお父さんと先輩は、病室を後にして自宅へと戻った。
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