キミさえいれば
「あぁ、これな。実はちょっとワケありなんだ」


「ワケあり?」


どういうことなんだろう。


「凛には見せてもいいかな。

でもビックリするかもしれない」


そう言って、先輩が長い前髪をかき上げた。


「あ……」


先輩がかき上げた髪の下にあるのは、おでこにくっきりと刻まれた縦長の傷。


すっかり治ってはいるけれど、凹凸があって、悲しいかな、かなり目立っている。


「別に人に見られてもいいんだけど、みんなをビックリさせちゃうから隠してたんだ。

それにおでこを出してると、視線がみんなここに集中して、それもなんか落ち着かないし」


そう言って苦笑いをする先輩。


「ひどいケガだったんですね……」


「うん。

自転車乗ってて、バイクと衝突したんだ。

結構何針も縫ったけど、命があっただけ良かったよ」


そうだったんだ。


それでそんな傷が……。


「ごめんな、黙ってて。

これを見せたらフラれるかと思って、怖くて見せられなかったんだ」


「先輩。私はそんなことで先輩のことを嫌いになったりしません」


「凛……」


だって、先輩は先輩だもの。


どんな先輩だって私は好きだ。


「凛、おいで」


「え……?」


「横においで」


先輩がそう言って両腕を広げる。


もしかして、そこに寝転べってこと?


こんなに大勢の人がいるのに?


う、うそ~~!
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