ナムストーンPART3

ガウリ3

音も収まり光の影も消えて再び静寂に戻った。

ガウリは大きく深呼吸をしてゆっくりと立ち上がる。

握りこぶしはしっかりと握りしめたままだ。


ふと見ると右手の中が光っている。

青白い輝きが握りこぶしから漏れ出ているではないか。


「なんだこれは?」


ガウリは恐る恐る握りこぶしを開いてみた。

汗にまみれた掌の中で奇妙な形をした

半透明の石が青白く輝いている。


まじまじと顔を近づけてじっと見つめていると

徐々に輝きは収まり普通の乳白色の

不透明な石になった。


「不思議な石だ・・・」


ガウリは右のポケットにそっとその石を忍ばせて

谷を上り村へと向かった。


ゲリラの統一戦線はまだまだ暗中模索だ。

そうこうしているうちに東パキスタンでは

インド軍が勝利しバングラディッシュとして

独立してしまった。


カシミールではインド軍の空爆が始まり

大峡谷を挟んで対峙したままで停戦してしまった。


1972年一応戦勝国となったインドに有利な協定が

結ばれてしまう。けっきょくイスラム過激派は

何もできずにガウリは大きな課題を抱えたまま

あの不思議な石を携えて帰国した。
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