ナムストーンPART3

危機2

あの時シャリフの指示を得てムシャラフが中距離ミサイル発射の
ボタンを押した。ポケットの石は輝きを増し小刻みに震え続けたが無視した。

実験は成功した。地下核実験の時はムシャラフはためらった。
石のバイブレーションがすさまじく青黒い輝きも極限に達していた。

脂汗をかきながら数十秒の間をおいてムシャラフはボタンを押した。
数キロも離れているのに大地の底から不気味な激震が襲う。
地球の悲鳴のような低音振動が響く。

激しい横揺れ。ポケットの石と波長が同じみたいだ。石は激しく振動し
青黒く不気味に光り輝いたかと思うと閃光を放って黒い塊になった。

ムシャラフはその後数日間は右足を引きずりながら身も心もひどく疲労困憊
していた。実験は成功したが気は重く毎夜ナムストーンを祈り続けた。もう
核のボタンは押すまい、この時ムシャラフは心の底からナムストーンに誓った。

1999年2月インドのバジパイ首相がパキスタンを訪問してシャリフ首相
と会談をした。とにかく全面戦争だけは避けなければならない。両国首相は
カシミールの緊張緩和を目指してラホール宣言を発表した。
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