彼が虚勢をはる理由





「起立、礼、着席」


担任が教室に入ってきたけど、その後に見慣れない人はついて来ない。

舞子の情報はガセだったのかなぁ?
隣りのクラスの転校生だったとか。


「今日からこのクラスに、新しいメンバーが加わります。夏野、入って」


担任の声に合わせて、一人の長身の男子が、教室に入ってきた。
そのルックスに、私は思わず目をみはる。

髪は明るくて綺麗な金髪、右耳にだけ幾つもピアスがついている。
そして、取り敢えず超モテそうな、格好良い系のイケメン。

ウチの学校の校則はかなり自由だから、その髪色とピアスに驚いたわけじゃない。
実際、私の髪も明るい茶髪だし、ハルの髪は金に赤メッシュだ。

ただ私が驚いたのは、そのイケメンが、けだるそうな、何かを面倒そうに感じてそうな、そんな表情だったからだ。

……しかし、私の驚きはこれだけじゃ済まないらしい。



担任が黒板に”夏野 陽一”と書き、その右側に”なつの よういち”と振り仮名をつけていた。

…夏野君か。
名前に合わず、ちっとも明るそうに見えないけど。


「夏野陽一です。前にもこの地域に住んでたそうですが、親の仕事の都合で関西に行っていて、戻ってきたそうです。夏野、自己紹介を」





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