彼が虚勢をはる理由





――しまった、寝てた!?
幾ら昨日は全く眠れなかったとはいえ……。


「星崎、眠いのは分かるが、授業中に居眠りするのは、出来るだけ我慢しろ」

「…すみません」

「おぅ。で星崎、黒板の空欄に、何が当て嵌まるか、答えられるか?」


私は瞬きしてから、黒板を見た。
空欄の後の言葉が"鎌倉幕府 創立"と書かれている。
……えーっと、「良い国作ろう」?


「1192年、ですか?」

「正解だ。居眠りには注意してな」


私はようやく解放されて、少しだけ安心する。
そういえば、起こしてくれたのが夏野君だった事を思い出して、私は夏野君の方をそっと見る。
当たり前と言えばそうだけど、夏野君は黒板の文字を、必死にノートに写している。
何だか悪い気がして、御礼を言うのは後回しにする事にした。

……というか、授業が始まる前には、夏野君は確かにまだ来てなかった筈なんだけどな…。
いつ来たんだろう? 物音で目が覚めそうな気もするけど。
そんな事を考えながら、黒板の横に掛けられた時計を見て愕然とする。


「……嘘…………でしょ?」


時計の針は十時過ぎを指していて、二時間目も半分が終わった事を示していた。
そういえば、日本史は二時間目の授業で、一時間目は家庭科だった筈だと気付く。





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