彼が虚勢をはる理由
中休み 〜私の夏休み〜

いち。






「それでは、これから成績表を渡しまーす!」


"ウギャー"とか"ワギャー"とかいう奇声、というよりも悲鳴が、終業式の後の教室をつんざく。
学期末に成績表を渡される――――何回やっても、これだけは絶対に慣れる事は出来ない。

今日は終業式。明日から楽しみと、宿題の山が待っている夏休みだ。
ハルはオシャレと彼氏とのデートに、舞子は部活でやってるテニスの練習に、毎日を費やすのだろう。
因みに私は、農家をやってる親族の手伝いをする毎日だ。


「次、星崎香苗~」

「はーい」


呼ばれたから教卓の前まで出て、成績表を受け取る。
席に戻ってからそっと確認してみると、思ってたよりも成績は悪かった。特に英語が。
…ふん、元から英語は苦手だし、日本人が国内で生活するには英語は不必要だよーだ。


「星崎、どうだった?」


私が本気で拗ねていると、隣りの席に座る夏野君が小声で聞いてきた。
……この人、さりげなく成績は良さそうな気がする。なかなかの天然ボケだけど。


「ヤバい。特に英語が」

「あー、星崎はいつも英語で苦しんでるからな。見せて?」

「えぇ~。……先に見せてくれるなら、良いよ」


本当は見せたくなかったけど、夏野君が見せてくれるなら、私も見せなきゃ悪い気もする。





.
< 49 / 145 >

この作品をシェア

pagetop