彼が虚勢をはる理由





私は何種類もある恋愛運の御守りの中から、ケータイにも付けられるストラップ仕様の、小さな可愛らしい御守りを選んで購入した。
御利益が本当にあるかは、さすがに分かんない。けど、少しでも心の支えになれば、良いな。

私がその場で、ケータイに買った御守りストラップを付けていると、紅実ちゃんは声をかけてきた。


「香苗、今日は楽しかった?」

「うん、マジ楽しかった!」

「そうか、それは良かった。良い気分転換になったでしょ?」


紅実ちゃんの満足そうな言葉で、私は"恋愛に御利益のあるとされる神社にお参りに行く"以外の、紅実ちゃんの目的を知った。
紅実ちゃんは、わざわざオシャレまでさせて、私に息抜きをさせようとしていたんだ。


「帰ろう、香苗」

「うん。……あの、紅実ちゃん」


先に歩き出す紅実ちゃんに声をかけると、紅実ちゃんは大きく振り返る。


「何?」

「今日は、お祭りに連れ出して、本当にありがとうね!」

「…どういたしまして。あと、その簪あげるよ。良く似合ってて、可愛いから」


紅実ちゃんは、フフフと笑った。夏の夜特有の、少し蒸し暑い風が吹く。
私の後頭部で、簪の蝶の飾りが、シャラランと揺れた。





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