彼が虚勢をはる理由





「何ソレ? 最低じゃーん!!」

「…本当に困っちゃうよね。テニスはラケット無しには、出来ないスポーツなのに」


ハルが怒りに任せて吠える。
そういえば、今日もテニス部の練習はある筈なのに、舞子の荷物にはラケットが無かった。


「で、どうなったの? ラケットは見つかった?」


私が聞くと、舞子は悲しそうに首を横に振る。


「…それが、まだなの。他の子達も皆、ラケットが見つかるまでは、部で持ってる予備のラケットを使う事になったんだけど……。いかんせんラケットの紛失は続きすぎて予備のラケットも足りないし、何より休みの日に家で自主練出来ないのがしんどいよね」

「そうか……。本当に酷い話じゃん、早くラケットが見つかると良いね」

「うん…。ありがとハル」


ハルが舞子を元気づけたタイミングでちょうどチャイムが鳴ったので、私達の話はいったん中断する事になった。先生が来る前に、私は急いで自分の席に戻る。
それにしても酷い話……。何でそんな事になったんだろ? 誰かの仕業なら、何でそんな事を?
本当に早く見つかると良いな。じゃないと、テニス部全体が困る事になりかねない。ってか、もう部全体が困ってるみたいだし。





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