彼が虚勢をはる理由





「ハル、一緒に返してくれれば良かったのに。それなら、少しくらい遅れても文句ないもん」

「マジで!? ごめんね、香苗。すぐに読んで返すから!」


……つまり、奢ってくれたコーヒーは、漫画を貸してくれた御礼というよりは、返却期間を守れなかったお詫びに近いみたい。
凄く律儀だ。
まぁ、コーヒー欲しかったから、有り難く頂くけど。


ハルは見た目がギャルだからなかなかそう思われないけど、実は凄く律儀だ。
期日や時間はしっかり守るし、交通ルールも破ってるのを見た事が無い。
授業の予習・復習もしっかりこなしてるのに、お洒落にも気を使っていて、彼氏や友達と遊ぶ時間もキープしてるんだから、どうやったらそんな事が出来るんだかよく分からない。

――――まるで遅刻常習犯で、授業中もよく眠っていて、休み時間は騒ぎを起こしていて、先生によく呼び出されている、協調性がまるで無い、どこぞの誰かとは正反対だと思う。

その"どこぞの誰か"――夏野君は、まだ来てなかった。
夏野君が来る前に、リーディングの先生が教室に入ってきてしまう。

…夏野君、授業にも遅刻とか付いちゃうよ?
その夏野君は、授業が始まってから十五分後に、教室に入ってきた。





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