彼が虚勢をはる理由





とは言いつつも、風邪で熱もある状態じゃ、学校は休むしかない。
昨日観てたテレビ番組で、“今年流行してる風邪は高熱が出て、感染力も強い”と言ってた事を思い出した。
感染力が強いんじゃ、尚更学校には行けないじゃないか。

仕方が無いから、今日は音楽でも聴きつつ、ノンビリ過ごそう。
そんな事を考えて、適当にイヤホンを耳に入れて、適当にミュージックプレーヤーのボタンを押して、ゴロンと横になってケータイをいじった。
しかし、ケータイで特に観たい物も無いので、特に意味も無く適当にケータイを操作し、これまた意味無くアドレス帳を眺めてみる。
“な行”を眺めていて、夏野君の連絡先が登録されてない事に気付く。
こんなに席が近い期間が長くて、こんなに色々と喋ってるのに、私は夏野君の連絡先すらも知らなかったのか…。
夏野君について、多くの事を知れたと思ってたんだけどな…。
“ケータイのアドレス交換が友達関係の証拠”だなんてこれっぽっちも思ってないけど、夏野君について知らない事がまだまだ有る事を痛感して、さすがに少しショックを受けた。

そこでようやく、ミュージックプレーヤーから音楽が流れてきていなかった事に気付いて、何か疲れて一気に脱力してしまった。





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