Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
煙草
G.W.明けの昼休み、廊下を歩いていると喫煙所から坂下が飛び出してきた。



「アンジェ、待ちなさい。」



そう言って、坂下は私の腕を掴んだ。



むせかえる程のタバコの臭いで、思い出すのも嫌な記憶が甦る。



休みの間、何度アイツに凌辱されてきたことか…。



私は坂下の手を振り払うと、その場にしゃがみこんだ。



「や…嫌っ!」



両腕を交差して肩を抱き、ただ首を横に振った。



「アンジェ?」



「タバコ…ヤダ。」



そう呟くと、坂下は近くの水道で手を洗い、口を漱いだ。



坂下が私のもとへ戻ってきた時は、その臭いはやわらいでいた。



「もう、大丈夫ですか?」



私は、頷いた。



「申し訳ありません。

耳から血が流れているので教えようと思ったのですが、不快な思いをさせてしまったようですね。」



坂下は、すまなそうな顔して言った。



耳から血?



さっき安全ピンで、新しくピアス穴を開けたばかりだから…。



私はそうすることで、アイツから受けた心と身体の痛みを誤魔化している。



左耳にルーズリーフの如く連なったリングのピアスは、ファッションなんかじゃない。



全てが自虐行為、自分を抹消することもできず、ただ誤魔化した回数そのもの…。










 

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