Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
霊安室に移動しても、アンジェは相変わらず坂下先生に縋りついて泣いていた。



僕は濡れタオルを瞼に当てているから、その姿を見ているわけではないが…。



「和さん、お願いだから目を覚まして。

抱きしめて、よしよしって頭撫でて。

いつもみたいに、キスしてよ…。」



毎日キスしてたのかよ!?…坂下先生、意外とエロいんだ?



…ってツッコミ入れたくなるような言葉に混じって、鼻をすする音が聞こえるのだから、泣いているのは間違いない。



今日は卒業式のリハーサル、泣きはらした目で教壇に立つわけにはいかない。



だけど腫れた目を冷やすための濡れタオルに、あとから溢れていく涙が染み込むのだから効果はなさそうだ。



さすがに、ジーンズで学校に行くわけにいかない。



一度、帰らないと…。



僕は濡れタオルを外すと、パイプ椅子から立ち上がる。



「アンジェ、そろそろ行くぞ。」



アンジェの頭をクシャクシャと撫でながら、声をかけた。



アンジェは少し恨めしそうに僕を見ると、よろよろと立ち上がった。



そして、坂下先生の唇にキスを落とした。



さっきもそうだったが、他人のキスを目の当たりにするのって…照れる。



僕は白い布を手にすると、坂下先生の顔に掛けた。



病院を出ると、夜が明けるところだった。



帰りは安全運転で、アンジェを家まで送り届ける。



「遅刻しても良いから、今日はちゃんと学校に来いよ。」



もっと気の利いたことを言ってやりたかったが、僕にはそう言うしかできなかった。






 
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