だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





リビングの扉が閉まったのを確認して大きなため息が出た。

結局何も言うことが出来なかったな、と思う。



湊が何を考えているのか。

私が何を考えているのか。



言わなくてもわかる、と想っていたのに。

言葉にならないことが、こんなにももどかしいなんて想わなかった。


けれど、言葉にしたところで上手に伝えられる自信もなかった。




とぼとぼとドアへ向かい、リビングの電気を消す。

明かりのついていない廊下への扉に手を伸ばす。




優希に背中を押されて頑張ってみようと思ったのはいいけれど、私には頑張り方がわからなかった。


今まで自分の気持ちを抑えてきたからこそ、どんな風に曝け出せばいいかわからなかった。




また、気付く。


結局私は何もわかっていないのだ、と。



自分の言葉の使い方。

湊の気持ち。

喧嘩の始め方さえも。



このまま謝ってしまった方がいいのかな、とも想う。

始め方さえ知らない喧嘩を、どうやって終わらせることが出来るのか。


そんなことまで不安になっていた。




臆病さが、増してくる。



いつも怖い。

湊がいなくなることが。




大きなため息と共に、重苦しいリビングから抜け出した。




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