だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





肩を並べて仕事をすることがとても勉強になる。

この人の頭の中は綺麗に整理がされていて、私の言葉をすぐに飲み込んでしまうのだ。



いつもの顔と私しか知らない顔が交差するたび、私にしか出来ないことが増えている気がする。

それは、いい意味で『心を許している』証拠のようで嬉しかった。




「お前、何か変わったな」




一通りの確認を終えた後、ぼそりと圭都が言った。

そっと目を向けると、ぼんやりと吊り広告を見つめたまま私のほうを見てはいなかった。




「前よりも地に足が着いてる感じがするな」




自分でもそう想う。


湊の影を追いかけてばかりの時は、いつもふわふわとしていた。

誰かの言葉に揺れたり自分の気持ちが揺らいでばかりいた。



けれど、それと向き合えと。

圭都が背中を押してくれた。


私が嫌がるのも厭わずに。

多少強引ではあったけれど、私には必要なことだったのだ。


そして、いつも支えてくれた。




折れそうな心を。

倒れそうな身体を。

前を向けない想い出を。




この人が教えてくれた。

『生きていく』という事を。




< 75 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop