不器用恋愛
「啓吾?何してんの?」
あたしは思わず場に不似合いな声を出す。だってその声の相手は今頃女とウハウハしてる筈で、今日はもう会う事のない男。
「啓吾くん。いらっしゃい」
加地さんは変わらず、良い笑顔で迎える。
「早かったね?」
なんて意味深な言葉を付け足しながら。
啓吾は無愛想にあたしの隣に座った。
啓吾が注文しなくても加地さんがいつも啓吾が飲むブランデーをロックで出す。
「なにしてんのよ?」
あたしはこの状況にもう一度、返事のないこのセリフを吐くしかない。